2021年ニュース

オリックスは“サブスク”開始 カーシェア「再成長」への道筋

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オリックス自動車(東京・港)は2月18日、カーシェアリング大手で日本初の定額乗り放題プランを導入すると発表した。「所有」から「共有」に向かう流れに乗り、順調に市場規模を拡大してきたカーシェア業界。ただ新型コロナウイルスの感染拡大によって成長に停滞感が見えている。最大手のパーク24はレンタカー事業との融合を通じて利便性向上を図るなど、各社が再成長に向けた次の一手を打ち始めた。

オリックス自動車はカーシェア事業で「定額乗り放題」サービスを始める

「クルマの気軽な乗り方を提案していければ」。オリックス自動車のレンタカー本部カーシェアリング部の中村健太郎部長はこう話した。

 同社が2021年2月19日から申し込みの受け付けを始める個人会員向けの新たな料金プランでは、1回の利用当たり3時間以内なら月額9900円、6時間以内なら同1万6500円で、何回でもカーシェアを利用できるようにした。

 従来のオリックスのカーシェアの料金体系は大きく分けて2種類あった。1つは840円の月会費に加え、利用時間15分につき210~310円の「時間料金」と、走行距離1キロメートルにつき16円の「距離料金」がかかるものの、最終的には月間利用料金から最大840円が割引となる「Aプラン」。もう1つは月会費がかからないが、時間料金が15分当たり310~460円と割高な「Bプラン」だ。

 定期的に利用するユーザーはAプラン、たまに利用するユーザーはBプラン、というような形で使い分けられてきたが、ここに来て第3の選択肢が登場した格好だ。定額プランは距離料金の支払いも必要ない。月額9900円のプランだと、1回3時間の利用を月に3~4回以上すれば、Aプランに比べて得になる計算になる。

 もっとも定額プランで利用できるのは平日のみ。この点に、カーシェア業界が抱える成長の停滞感が透けて見える。

 日本でカーシェア事業が盛り上がり始めたのは2010年代だ。02年に国内で初めてオリックスグループなどがカーシェア事業を始めたものの、なかなか普及が進まない中、09年にパーク24が参入。駅近くや住宅街に多く抱える時間貸し駐車場を活用して車両を配置し、個人を中心に会員数を増やして、14年10月期にはカーシェア事業単体での黒字化を果たした。

 20年9月末時点で、オリックスのカーシェア事業で提供する車両数は3310台、会員数は約29万4000人だ。対して、パーク24は20年10月末時点で車両数が2万7000台、会員数は150万人。パーク24がけん引する形で市場は拡大を続けてきた。20年3月に発表された富士経済(東京・中央)の調査によると、19年の市場規模は500億円弱と推定され、30年には4555億円まで拡大すると期待されていた。

 そんな中でやってきたコロナ禍。もっともカーシェア業界にとってこの災厄は追い風となった一面もある。「密」になりやすい公共交通機関を避け、クルマで移動したいと考える消費者が出始めたからだ。実際に、パーク24のカーシェアの会員数は20年2~10月で16万人増えた。

 半面、業績は伸び悩んでいる。パーク24のカーシェア事業は、14年10月期に売上高103億円、営業利益1600万円だったものが、19年10月期に売上高348億円、営業利益70億円まで拡大してきた。ただ、コロナ禍の影響を受けた20年10月期は売上高が351億円、営業利益は64億円にとどまった。

 特に20年2~7月の売上高は約160億円と前年同期に比べ10億円程度の減少に転じた。1回目の緊急事態宣言、そして7~8月のコロナ禍「第2波」で外出を自粛する消費者が多かったことに加え、法人需要が低迷したことも業績の伸び悩みの要因だろう。

パーク24の場合、会員の4割を法人会員が占める。個人会員の利用は週末や祝日に偏るため、カーシェアを営業車などとして使う法人会員の増加が平日の稼働率を底上げし、業績の拡大に寄与してきた。ただ、コロナ禍によってテレワークやオンライン会議が急速に普及。客先にクルマで向かう、という場面が減ってしまった。オリックスも平日の法人需要が低迷している。

 “コロナ後”が来たとしても、法人需要の先行きは不透明だ。オンライン会議が継続して定着すれば、リアルな商談の場は減るかもしれない。逆に、駐車場代などの維持コストがかさむ社有車やリース車を手放し、カーシェアを活用しようと考える企業が増える可能性もある。

 一方で、オリックスが20年夏以降の利用データを分析したところ、平日の個人会員の利用件数は伸びており、特に6時間以下と短時間の利用が増えているという。テレワークが普及した分、家族の送迎や買い物などで平日にユーザーがカーシェアを利用する場面は増えているようだ。

 平日の稼働率向上を先行きが不透明な法人需要だけに頼るのではなく、生活様式の変化に対応して増えた個人会員の需要を取り込めれば、パーク24に対抗できる――。これがオリックスが定額プラン導入に込めた意味といえる。

 迎え撃つパーク24はレンタカー事業との融合で利便性を高める考えだ。レンタカーでは20年10月末時点で1万8000台弱の車両を抱えている。この車両をカーシェア用としても使えるようにしていく。

 その上で、例えば法人需要が見込める平日はビジネス街にレンタカー兼用の車両を配備し、休日は逆に住宅街に車両を集める、というような形でユーザーがカーシェアの予約を取りやすくする。既に大きなシェアを獲得している今、確立した収益モデルは維持しながら、機会損失を減らす狙いがある。

 カーシェアでの「オリックス対パーク24」の争いの第1幕で、パーク24に軍配が上がったのは間違いない。一方で「ウィズコロナ」「アフターコロナ」を舞台とした第2幕でオリックスが投入した「定額プラン」の競争力は高いものがある。カーシェアは事業者の乗り換えも容易だ。最古参の巻き返しが始まった。

 

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