2020年ニュース

車の整備にVR コロナ禍で活用広がる

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企業の間で仮想現実(VR)や複合現実(MR)といった「XR」技術をビジネスの場で活用する動きが広がり始めた。自動車整備の補助や決算説明会など用途は様々。新型コロナウイルスの感染拡大で人との接触が制限されるなか、新しいコミュニケーション手段として定着する可能性がある。

車の部品が一目瞭然

11月中旬、富山市にあるネッツトヨタ富山の店舗。整備士の川口裕功さんはスポーツ車「GRヤリス」のボンネットを開けてエンジンルームを点検していた。

マニュアルを読む代わりに川口さんが装着するのが、米マイクロソフトのゴーグル型端末「ホロレンズ2」だ。レンズ越しに見える現実の景色に、仮想の映像を重ねて表示するMRを使う。現実のエンジンルームの上に仮想の配線や電子部品の位置が立体的に見え、調べる部品がどこにあるのか一目でわかる。

トヨタ自動車は3車種の配線や回路図をまとめた整備士向けアプリを開発し、年内に全国のスポーツカー販売店「GRガレージ」に導入する。川口さんは「紙のマニュアルはページをめくって点検箇所を探す手間があったが、ゴーグルを着けてなら作業時間を2割減らせる」と話す。

これまでXRはゲームなどエンターテインメント用途で使われることが多かった。米フェイスブック子会社のオキュラスが価格を5万円程度に抑えたVRゴーグルを発売するなど端末価格が低下。業務用ソフトの開発が相次ぎ、企業の現場でも利用が広がり始めた。

決算説明会にアバター

「本日はお集まりいただきありがとうございます」。人工知能(AI)翻訳を手がけるロゼッタの五石順一最高経営責任者(CEO)はVR空間で参加者に話しかけた。

6日、VR内で決算説明会を開いた。10人の株主と五石氏はどちらもアバター姿。出席した株主は「実世界の説明会より発言しやすかった」と満足げだ。

ロゼッタは新型コロナを機にVR活用にかじをきった。10月に東京・新宿の本社で働く経営幹部20~30人の仕事場がVR空間に移った。ロゼッタの持つ自動翻訳技術とVRを組み合わせたソフトを開発中で、21年にも海外の人とVR空間で対話ができるようにする。

熟練の技を習得

 

社員研修でもXRは有効だ。JFEスチールは西日本製鉄所の倉敷地区(岡山県倉敷市)で溶けた鋼を鋳型に流し込んで固める作業の研修にMRゴーグルを使い始めた。

鋼の温度は最大で1600度に達し、耐火服が必要な危険な作業となる。適量を鋳型に流すのは難しく、失敗すると億円単位の損失につながる恐れがある。これまでは先輩社員の作業を見て学ぶ訓練方法だったが、習得までに時間がかかった。

そこでゴーグル内の仮想空間に鋳造機を再現し、安全な部屋で手の動きを練習できるようにした。入社42年目のベテラン、岡本和也さんは「再現度が高く、若手に技術が身についている実感がある」と話す。すでに新入社員を中心に数十人が研修済みで、今後は他の拠点や作業にもXR研修を広げる。

新型コロナの感染拡大で企業のデジタル化が急務となっているなか、高速通信規格「5G」の商用化を追い風にXRは活用がさらに進む見通しだ。人手不足が深刻な製造業や小売りの現場では省人化や生産性の向上が課題であり、日本からXR活用の先進事例が生まれるかもしれない。

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