2020年ニュース

トヨタ異例の追加リコールの裏側 デンソーが払う代償

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トヨタ、ノア など39車種21万台を再リコール デンソー製の燃料ポンプ不具合でエンストのおそれ

トヨタ、ノア など39車種21万台を再リコール 燃料ポンプ不具合で ...

トヨタ自動車は10月28日、『ノア』など39車種について、燃料ポンプに不具合があるとして、再度、国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出た。対象となるのは、2017年7月5日~2019年12月6日に製造された21万0363台。
対象車両は、低圧燃料ポンプのインペラ(樹脂製羽根車)の成形条件が不適切なため、樹脂密度が低くなって、燃料により膨潤して変形することがある。そのため、インペラがポンプケースと接触して燃料ポンプが作動不良となり、最悪の場合、走行中エンストに至るおそれがある。
改善措置として、全車両、低圧燃料ポンプを対策品と交換する。
不具合は109件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。
今回の不具合について、トヨタは2020年3月4日付けでリコールを届け出たが、検証を進めた結果、対象拡大の必要性が判明したため、再度リコールを届け出た。

デンソーの燃料ポンプに欠陥 リコール台数は745万台を超えた

リコール台数が世界で745万超に──。デンソーの欠陥燃料ポンプの問題が深刻な事態に陥っている。10月28日、トヨタ自動車は「国内で21万363台、海外で約245万台」(同社広報および国土交通省)のリコールを国交省に届け出た。このリコールの原因もデンソー製欠陥燃料ポンプにあることが国交省やトヨタの関係者などへの取材で明らかになった。
既に判明しているトヨタ車(過去分)とSUBARU(スバル)車、ホンダ車を合わせた479万台超に、今回のトヨタ車の新規分である約266万台が上乗せされてリコール規模が拡大。事態は収束するどころか、さらに悪化する方向に進んでいる。

欠陥低圧燃料ポンプを搭載したリコール対象車。ノア(左上)、ヴォクシー(右上)、クラウン(左下)、NX300(右下)など合計39車種に及ぶ(出所:トヨタ自動車)
欠陥低圧燃料ポンプを搭載したリコール対象車。ノア(左上)、ヴォクシー(右上)、クラウン(左下)、NX300(右下)など合計39車種に及ぶ(出所:トヨタ自動車)

新たにリコール対象になったクルマは、国内だけで2017年7月5日から19年12月6日の期間に造られた「ノア」や「ヴォクシー」などのミニバンから、「クラウン」や「カムリ」などのセダン、高級車「レクサス」シリーズなどまで39車種と多岐にわたる。事故を起こした事例はないが、市場から109件の品質クレームが報告されている。

「2度目のリコール」の背景

あるトヨタ関係者は、今回のリコールについて「異常な事態だ」と指摘する。というのも、今回が「2度目のリコール」だからである。
トヨタは同じ欠陥燃料ポンプを原因とするリコールを20年3月4日付に国交省に届け出ている。通常なら、この時に燃料ポンプの内容を精査してリコール対象のクルマを全て洗い出せたはずだ。
ところが、トヨタは今回、追加でリコール対象車を同省に報告した。これについて同社は、「本件は(一度)リコールを届け出たものだが、検証を進めた結果、対象拡大の必要性が生じたため、新たに届け出た」と説明する。ではトヨタの検証に不備があって漏れが生じたのだろうか。

同じ欠陥燃料ポンプが原因のリコールをトヨタは2回届け出た。そのため、1回目と2回目の届け出において重複するクルマの製造期間がある。1回目で問題なしとした車種を、顧客に安心感をもたらすために改めてリコール対象と判断したとみられる(出所:日経クロステック)

同じ欠陥燃料ポンプのリコールをトヨタは2回届け出た。そのため1回目と2回目の届け出において重複するクルマの製造期間がある。
1回目で問題なしとした車種を、顧客に安心感をもたらすために改めてリコール対象と判断したとみられる(出所:日経クロステック)

どうやらそうではないようだ。「事故につながるような本当にまずい品質不具合であれば、今回対象となった車種は前回のリコールの届け出の中に含まれていたはずだ。これはトヨタが検証漏れをしたのではなく、品質のばらつきを調べた上で、より安全・安心側に振ったリコールとみるべきだろう。要は、『疑わしきは罰する』という判断だ」(同関係者)。
背景には、最近世間を騒がせている品質問題がある。件(くだん)のデンソー製欠陥燃料ポンプ問題に加えて、20年9月にはジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(JSSJ、旧タカタ)製シートベルトで品質不正が発覚したという報告を、トヨタはJSSJと国交省から受けた。法令が定めた試験方法と安全基準(強度)をJSSJが満たしていない事実が確認されれば、大規模リコールが避けられない事態となっている。
こうした大きな品質問題の発生により、「今、自動車の『安全・安心』に向けられた世間の目は以前に増して厳しくなっている。こうした中で、もしも人命に関わるような事故が起きたらトヨタ車の信頼は地に落ちかねない。それを何としても避け、顧客に安全や安心を感じてもらうためのリコール判断だろう」(同関係者)。

追加で460億円の賠償金

このトヨタ車の追加リコールにより、デンソーはかなり厳しい立場に追い込まれることになる。大規模リコールの原因となる部品を造ったという企業イメージの毀損だけではない。今回のリコールでは、リコール対策費用の原資となる追加の賠償金の支払いを余儀なくされた。
同社は10月29日に発表した20年4~9月期決算で品質対策費用460億円を計上した。主にトヨタの追加リコールへの賠償金に充当する。
既に前期(19年度)決算で2220億円の費用を引き当てており、ホンダ車までのリコール分(冒頭で触れた479万台超の分)は「織り込み済み」(デンソー)と主張していた。つまり、追加リコールで発生した分は、デンソーの想定を超えた賠償金の支払いということになる。

トヨタが転注を検討 デンソー依存からの脱却

デンソーにさらに追い打ちを掛けるのが、トヨタが「転注(発注先を他社に切り替えること)を検討している」という、同社関係者の証言だ。実は、燃料ポンプに関し、トヨタはこれまでデンソーに依存しすぎてきた点を反省しているという。
「トヨタでは燃料ポンプを汎用的な部品とみていたこともあり、かなり前から発注先はほぼ『デンソー一択』だった。この甘えの構造が大きな品質問題の温床となった」(同関係者)。こうした反省から転注を含めた議論がトヨタ社内で起きているという。
ただし、部品メーカーに対するトヨタのこれまでの姿勢を踏まえると、デンソーへの発注をゼロにするのではなく発注量を減らし、その分を他社に発注するのが現実的と考えられる。その上で、トヨタから専門家をデンソーに送り込んで指導し、同社に改善を促す。その結果、品質が回復したら再びデンソーへの発注を増やすだろう。
言うまでもなくデンソーはトヨタグループの一翼を担っており、同社グループの結束は固いからだ。だが、今回の手痛い失敗から、「デンソー一択」状態には戻さないだろう。
トヨタからは「デンソーは技術に絶対的な自信を持っている。今回の件はそれが裏目に出た」という声が上がっている。市場クレームへの対応が遅れ、大規模リコールに発展した背景には「生産部門と設計部門とで連携ができず、責任のなすりつけ合いがあったとみるのが妥当だ。責任を取れるリーダー不在の体質に問題がある」という見方もトヨタOBからは出ている。トヨタにはデンソーに対して意識改革や体質改善を促したいという思いがあるようだ。

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