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トヨタ社長が語ったコロナで変わる車のあり方

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トヨタ自動車が5月12日にオンラインで開催した2020年3月期決算説明会は、非常に注目度の高いものになった。一番の理由は、新型コロナウイルスの状況下でトヨタがどんな数字を出してくるのかという、世間の関心の高さだろう。
結果として、2021年3月期の営業利益が5000億円(前期比79.5%減)という強気の見通しが示された。
リコール問題、リーマンショック、東日本大震災と多くの危機を乗り越えてきた豊田章男社長によって進められた経営改革が、ここで大きな成果として世に知らしめられたように思える。
一方、そうした経営に関する話以外に、トヨタがこの未曽有の危機の中で、アフターコロナにむけて自動車業界の未来をどのように描いていくのかにも注目が集まった。
3密回避などと言われる中で自転車、そしてクルマなどのパーソナルモビリティが再認識されている。外出自粛、非接触社会への移行で、そもそもモビリティ自体の変革がが迫られているとも言える。

「非接触型」社会へ

コロナウイルスの影響でプライベート空間としてのクルマが改めて注目される中、クルマに求めるものが変わってくる、あるいはクルマの再認識が進むことが予想される。
豊田社長はインタビューで次のように語っている。
「今回のコロナ危機を経験して、非接触型社会に向けた流れが加速していくんじゃないのかなという風にも思っております。よりパーソナルなモビリティニーズも高まってくると思いますので、数年前に私が、自動車会社からモビリティーカンパニーに変革していくと申し上げたことが、非常に現実味を帯びてきたんじゃないのかなとも思います」
他人との接触を控える社会。しかし豊田社長自身、これまで現地現物にこだわってやってきたことが非接触に置き換わり、かえって業務上のコミュニケーションが高効率化している部分があるという。
今後、人と人との交わりにおいて、移動を伴わないコミュニケーションの形は増えるのだろう。
そこでは改めて、自動車という乗り物を売るだけに留まらず、「移動すべてを網羅する会社への変革」というテーマがクローズアップされてくる。こうした状況下では、自動車販売だけの会社にできることは非常に小さい。CASEやMaaSはより強固に推進されていくはずだ。人の移動だけでなく、物流に関しても同様であろう。

豊田社長は続けた。
「非接触型であるがゆえに、全部が自動運転になるのかということではなくて、扱う人間がより楽しく、より豊かに生きることができるクルマ、いわばFun to Driveな方向を目指していきたい」

リアルな世界ならではの感動を

パーソナルモビリティには、いろいろな形が考えられる。当然、自動運転もそこに盛り込まれていくのだろうが、トヨタがそれを単なる「A-B地点間の移動ツール」のようにはしたくはないと考えていることは、これまでも再三、言われてきた通りだ。これについては、寺師茂樹執行役員が次のように語っている。
「今回、人の移動が止まるということはどういうことかを、多くの人が体感、実感したんではないかと思います。特にバーチャルだけではやはり限界があり、リアルの世界が我々をいかに豊かにしているか、身をもって体験できたのではないかと」
リモートワークが推進され、通勤の必要が無くなったが、それがまた別のストレスをもたらして・・・などと言われ、誰もが単純に人は外に出たい、移動したいんだと痛感させられた。情報が、データが、あるいは物が、やりとりできればいいわけではない。

その意味では、トヨタが100年に一度の変革期として捉えてアクションしていることは、大きく変わらないのかもしれない。豊田社長は今年1月に発表したWoven Cityを引き合いに出して次のように語った。
「Woven Cityは、人を真ん中に置いた実証実験です。『MOVE』という言葉は、移動するという意味もありますが、感動するという意味もございます。人が動くことで感動するというのはどういうことか、というクルマづくりをやっていきたいなと思っております」

クルマの売り方の変革について豊田章男社長は次のように語っている。
「営業面では、ちょうどトヨタ国内の販売店では全店併売をやり始めております。それからKINTOによる定額販売など『クルマを所有する』『使用する』いろんな選択肢を今、用意をしております。そういう中で、レクサスとかGR、特にこの2つにはストーリーが必要かなと思っております。そのクルマを持つ喜びの何かしら物語を商品以外、商品のスペック以上に提案できれば、きっとその感動をともに共感できる商品提供ができるんじゃないのかな、というふうに思っております」
ブランドとは、要は物語性、ストーリーである。しかし目下、レースでの活躍をブランド力につなげようにも、モータースポーツはまだシーズンを始められないでいる。本物の手触りを伝えようにも、オンラインやバーチャルでは限界がある。
これからのブランド体験につながるリアルとはどうあるべきか、どうオンライン側に引き寄せていくか、今後のレクサスやGRには、その辺りのアップデートが求められてくるのかもしれない。
当然、これは簡単ではない。しかし、歴史ある海外ブランドも同様に直面している問題だから、ここから抜け出せれば、どこよりも強固な新しい時代の物語を紡いでいける可能性もある。
例えば今回のコロナ禍で、妻子を電車には乗せたくないからと、急遽クルマを買ったという話を何件も耳にした。懇意の販売店に連絡して「何でもいいからコンパクトめで、すぐ納車できるやつを」のような話だ。
国内で言えば、こんな時にオンライン上に解りやすい窓口があり、商談や支払いなども簡単に、確実に済ませられ、あるいはそういう理由なので当面サブスクリプションでいいという人にはKINTOなども結びつけて提案できるような体制があったなら、それはこの時代に求められる物語性になるのではないだろうか。クルマ自体のスペックや魅力だけでは、ますますブランドを語れなくなってきたことは間違いない。

トヨタ流のカイゼンで新たな時代を切り開けるか?

「皆さまの困りごとというものが、技術とともによくわかったというのが、今回の体験ではないかと思いますので、1人でも多くの仲間の方々と、こういう問題を解決していただけるように、一緒に協力してやっていきたいというふうに思います」
困りごとや課題がいくつも噴出してきたわけだが、トヨタには得意のカイゼンで、こんな時代だからこそできるやり方で、モビリティの未来を切り開いていくことを期待したい。それは間違いなくトヨタ自身の物語をもまた強固なものにするはずだ。

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