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新型コロナが自動車業界に与える影響

投稿日:2020年5月24日 更新日:

政府は4月23日にまとめた月例経済報告で、景気について「急速に悪化しており、極めて厳しい状況」との判断を示した。このような厳しい経済下で自動車業界が直面する課題が浮き彫りになっている。

2020年度の自動車消費ニーズの落ち込み

帝国データバンクの景気動向調査(2020年4月調査結果)によれば、10業界51業種すべての業績が悪化したという、未曽有の厳しい状況となっている。更に、民間エコノミストからは、緊急宣言が5月31日まで延長されて個人消費が大きく冷え込み、新たな失業者が77万人に増えるといった厳しい予測が出ている。企業の業績悪化により、給与が減少し、個人消費に影響が出てくることは間違いない。
それにより自動車需要に対する手控えが発生している。新型コロナウイルスが長期化すれば、公共交通機関ではなくマイカー移動を重視する需要が高まる可能性もあるが、経済への影響だけを見た場合、不景気になれば個人所得が減り、車を保有しない人が増えていく可能性が高い。深刻化する若者の車離れと人口減少・少子高齢化も追い打ちになる。
多くの世帯に自動車が行き渡っている日本においては新規購入世帯の割合は新興国に比べると低い。1台目の購入の潜在的需要は生まれず代替え需要が基本となる。自動車購入の意思決定サイクルが長期にわたる底堅い製品であるため、急速に自動車代替え需要が減ることはない。しかし、消費者の新車代替え購入は先延ばしになる可能性が高い。2020年後半から2021年以降にまで自動車販売の需要がずれ込む。
特に新車のような高額な商品は、不景気になると、購買力が低下する。更に先行き不透明なコロナの影響が、不安と失業率を増加させる。メーカーでの在庫が少なくなり納車が先延ばしになることも重なり、新車販売は中長期的に影響を受ける。
通年で日本における新車販売台数の下落幅は15%近くになる可能性が大きい。25%以上の下落になった場合は、トヨタでさえも赤字に陥る可能性がある。

メーカーの生産調整

IHSマークイットによれば、2020年の世界の自動車生産台数を下方修正し約21%減少の7,100万台程度まで落ちる。リーマン・ショックの減少率(マイナス12.4%)を大きく上回る水準だ。ただし、コロナウイルスの収束時期が遅れるほど需要は減る。
既に自動車メーカー各社の工場生産停止は、当初の中国工場から欧米に移り、そして日本国内工場にも波及してきた。自動車各社は、工場の従業員を一時解雇したり、一時期休させたりして、長期間の工場停止を想定し始めている。新型コロナウイルスの影響は長引く。理由はサプライチェーンだけでなく、需要減少という事態に直面しているためだ。
コロナショック終息後の、自動車産業のV字回復は期待できない。完全終息するまで少なくとも数年かかり、失業者が増え、収入は減少する。消費者による自動車の代替えは生活の中での重要な優先事項ではなくなる。自動車の需要がない、つまり売れなければ、供給サイドのメーカーも自粛し、自動車産業の回復には2年から3年の長い時間がかかる。
特に日本の場合は、自動車とそれに付随する産業がGDPに占める割合が5.5%と他産業に比べて高く、工場誘致などで雇用を維持してきた地方経済にとっても影響が出てくることは間違いない。更に、自動車メーカーの悪化から、自動車部品メーカー、ディーラーやトラック輸送業界、タクシー業界に至るまで車関連業界全体に危機が及ぶことになる。

対面営業活動の変化

コロナの影響で、対面営業活動の禁止が行われるところも出てきている。新車引き渡し、店舗への納車、修理補修などのアフターセールスへの提供も滞る。今後この流れは加速される。日本において自動車販売ディーラーや整備工場は、自粛要請職種ではないが、営業時間の短縮、更に出勤者を少なくさせるシフト体制を実施している。
現在、日本における自動車販売の営業は自粛モードで新規営業ができず、商談数が足りず、非対面営業の実施により混乱している。アメリカでは、対面営業からの脱却を迫られ、オンライン販売を強化している。更に、アメリカのウォルマートが行っている「非接触ショッピング」の流れが自動車業界でも起きてくる。日本においても、愛車の査定ができるドライブスルー形式の非対面査定サービス「ガリバー ドライブスルー査定」、中国では自動車メーカーGeely(吉利)が、自動車の非接触発注&デリバリーシステムを導入し始めた。
自動車販売の場合は、100%の非対面営業は難しい。それを理解した上で、業務と仕事を整理、分類し、可能なものはリモートで行っていく体制を早急に構築することが生き残るポイントだ。
コロナショック時代には、オンラインによるリモート化がマストのスキルとなる。2021年以降を生き残っていくためには、必須のリテラシーとなる。このようなリテラシーを持つ人材の確保、それによるビジネスプロセスの改善が重要だ。本来であったら既にできたことが、今まで過去の常識にしばられシフトしてこなかった。良いか悪いかは別としてコロナショックによって変わる。そしてこの変化は戻ることはない。

コロナで再認識、自動運転化加速の必要性

新型コロナウイルスの拡大後、無人運転や物流ロボットなどの技術は、コロナ感染拡大防止という観点から非常に大きな役割だと理解されるようになった。医療機関でも遠隔操作ロボットを導入して隔離エリアの患者に食事や物資を提供している。現在アメリカでも自動運転車を使ってモノを配送する取り組みは活発である。自動運転車で医薬品や必需品を配送するためだ。
中国でも新型コロナが規制緩和の引き金になっている。自動運転技術を搭載した配送ロボットの走行制限が緩和され、1部地域で配送ロボットを活用した取り組みが盛んになった。またアメリカのフロリダ州では、自動運転シャトルバスによる医療品やコロナウイルス検体の自動搬送を行っている。医療現場において搬送作業の負担を削減し、医療従事者や作業スタッフへの感染拡大防止に大きく貢献している。
今後、無人運転、つまり自動運転技術の推進が加速される。アフターコロナ、1つ目の自動車業界の未来、キーワードは「自動運転化」だ。無人走行の開発と密接な関係にあるのはEVだ。自動運転化の加速により、EVは恩恵を受けることができる。

変化する自動車の価値観

日常の「足」については、EV化が進む。軽自動車よりも1回りサイズの小さい超小型の電気自動車(EV)への関心が高まっている。それによりバッテリーのシェアリングを含むインフラシステムの見直しは進んでいくことになる。更にウィズコロナの時代においては、「巣ごもり」需要は継続される。恐らく人よりもモノの移動が増える。物流目的でのMaaSへの進化が期待される。つまり今までの自動車の活用方法が変わる。人が移動するのではなく、モノの移動を補助するモノへとシフトする。モノの移動の効率化に向けたラストワンマイルの技術、サービスが不可欠になる。
MaaSとは(モビリティ・アズ・ア・サービス)、鉄道やバス、タクシー、レンタカーなどの今までの交通サービスと、これからのカーシェアリング、自転車シェアリング、配車サービス、自動運転などの新しい交通サービスを統合し、スマートフォンアプリを通じてルート検索、予約、決済を行うことで利便性向上をした移動ができるようにする動きだ。自動車業界の未来のキーワードは「MaaSによるモノのラストワンマイル」だ。アフターコロナの日常生活において、必要不可欠となるサービスだ。
また、アフターコロナ社会でソーシャルディスタンスやパーソナルスペースへのニーズが今よりも高まることで、カーシェアリングの流れは読めなくなった。そうなるとCASEのS(シェアリング)を抜かしたCAEの要素をまとめると”ネットワークにつながる自動運転のEV”というのが未来のクルマ像だ。
C(コネクテッド)とA(自動運転)、E (EV)では差別化がしづらい。そのためSは付加価値サービスのS(サービス)となる。車内の消毒、空気清浄など衛生環境サービスは差別化の1つになる。またマッサージ機能つきシートや健康管理システムなどヘルスケアとしての空間、動画音楽配信やエンターテイメントなどパーソナライズされた空間になる。革新的な車内サービスを取り入れ従来の考え方にとらわれない活用だ。

「世界の都市封鎖」解除した後に何が残るのか。生き残るためには、目の前のことではなく、将来のことについてしっかり考え、今から準備をしておくことが重要だ。価値観が大きく変わろうとしている中、未来のビジネスモデルを考え直すタイミングにきている。

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