すべての記事

CASE時代のタイヤ|ブリヂストンの変革

投稿日:2020年3月29日 更新日:

ブリヂストンの「断トツの商品」

CASEを見据えるブリヂストン 脱製造業への変革

タイヤ業界最大手のブリヂストンでは、タイヤから取得した走行情報を使って顧客の生産性を高めるなど、データをサービスにつなげる企業へと変革しつつある。サービスの対象を鉱山機械からクルマに広げようと、欧州地図データTomTomから法人向け車両管理サービスを1000億円で買収した。世界シェア1位の座に安住することなく、シェアリングや電動化などのCASE時代に向け経営の舵を切っている。

1個500万円の巨大タイヤ

資源を採掘したり運んだりする巨大なダンプカーや大型トラックには、直径約4m、1個約500万円の専用タイヤが必要になる。タイヤの破損などで鉱山機械が動かなくなれば、ユーザーの機会損失に直結する。乗用車向けとは違う特殊な加工技術と高い品質が求められるため、供給できるのは世界でもブリヂストンとミシュランのみだ。そのブリヂストン製巨大タイヤのデータを取得しているのが、タイヤの内側に貼られた手のひら大の黒い薄型センサー「B-TAG」だ。
b-tag

 

B-TAGはもともと、「IoT」というコトバもなかった90年代後半から、現場の記録作業の効率を高めるために導入が進められた。鉱山機械向けタイヤに使うセンサーは過酷な環境にも耐えなければならないため、サプライヤーから生産を断られるなど実用化が難航した。それでもタイヤ内の熱を計測できる技術を独自で開発するなど地道な改良を重ね完成にこぎ着けた。
ブリヂストンでは、B-TAGが常に記録するタイヤの内圧や熱などのデータに、現場の整備スタッフが取得する摩耗具合などのデータを組み合わせて分析をしている。
この鉱山機械向けのソリューション事業を始めたの2012年当初は、タイヤの摩耗具合などから最適な交換時期を予測・提案して故障を未然に防ぐアフターサービスが主流だった。しかし今では、車両の稼働状況や走行環境に応じて最適なタイヤを提案し、顧客の生産性向上につながるようなアドバイスをするなど、サービスを軸にした事業モデルへの転換を進めている。

世界首位でもCASE時代への危機感

ブリヂストンは約15%の世界シェアを誇るタイヤ業界の最大手。日本国内で強固な販売網を持っていたことに加え、海外でも大型買収を重ね07年にミシュランを抜いた。
盤石に見えるブリヂストンが、なぜサービスを軸にした事業モデル転換を進めているのか。背景にあるのが、自動運転やシェアリングなど「CASE」時代にタイヤの価値が大きく変わることへの危機感だ。これまでタイヤは、「クルマがどれだけ進化してもなくならない」代表的な製品分野とされてきた。しかしその競争環境が変わり始めている。シェアリングサービスが普及すれば新車の販売台数が減少するとの予測もあり、それだけタイヤの新車需要がしぼむことになる。業績も19年12月期の売上高は前年同期比3.4%減の3兆5256億円、営業利益は同19%減の3260億円。売上高営業利益率は9.2%と製造業としては高水準だが、設備投資や研究開発費の増加に業績の伸びが追いついていない。津谷正明会長兼CEOは「将来的に全てがソリューションでないとビジネスが成り立たない」と話す。従来型のタイヤの販売だけでは成長が見通せなくなっている。

「移動ソリューションのコントリビューター」を目指す

「守り」から「攻め」トムトム車両管理プラットフォーム事業の買収

こうした局面でブリヂストンが目指すのは、タイヤのデータを活用し新しい価値を生み出す企業への転身だ。鉱山向けのIoTをはじめ、これまでのソリューションビジネスは顧客のコスト削減に役立ててもらったり、機会損失を防いだりといった「守り」のサービスだ。この守りから「攻め」に転じるべく19年、地図データ大手のオランダのトムトムから、タイヤの製造・販売とは直接関係ない事業を約1000億円で買収し関係者を驚かせた。トムトムが日々吸い上げている欧州86万台分の車両移動データに価値を見出し、次世代を生き抜く新たなサービス開発の源泉にする狙いがあった。車両から取得したリアルタイムのデータを分析すれば、道路の渋滞状況はもちろん、タイヤの摩耗状況からドライバーの「癖」も把握できる。ブリヂストンはトムトムとの融合で、あらゆる分野のMaaS(Mobility as a Service)に関わるユーザーやサービス事業者に対し、商品やサービスをデジタルでつなぐ先進的なソリューションとして、新たな顧客価値・社会価値を提供するビジネスプラットフォームの構築を目指している。

「T&DPaaS」のコンセプト

ブリヂストンT&DPaaSで脱製造業へ

「自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えており、モノ売りからコト売りへの移行が始まっている。タイヤはクルマの走りを支えてきたが、これからは進化するモビリティを支えていかなければならない。そこで、ブリヂストンが移動ソリューションのコントリビューターとなるためのソリューションプラットフォームがT&DPaaSである」とブリヂストン幹部は語る。T&DPaaS(Tire & Diversified Products as a Solution)は、あらゆる分野のMaaSに関わる人やサービス事業者に対し、優れた商品とサービスをデジタルでつなぎ、新たな顧客価値・社会価値を提供するビジネスプラットフォームの総称だ。T&DPaaSのコンセプトでは、世界トップシェアのタイヤをはじめとする「商品」、トラック向けタイヤで展開を拡大する「サービス」、乗用車向け9000、商用車向け3500拠点をグローバルに展開する「サービスネットワーク」をデジタルコネクティビティで融合し、ソリューションとして提供していくことを目指している。
モノ売りではなくコト売りに変革するブリヂストンの今後に注目していきたい。

-すべての記事
-, , ,

Copyright© 自動車業界最前線|MaaS・CASE , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.