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モネテクノロジーズ(MONET)の描くミライとは

投稿日:2020年3月15日 更新日:

モネテクノロジーズ MONET Technologies(MONET)の設立

自動車業界は「100年に一度の大変革時代を迎えている」との危機感からトヨタ自動車の豊田章男社長からソフトバンクの孫正義会長に声を掛けたことで、2018年9月にモネテクノロジーズMONET Technologies(MONET)が設立された。新しいモビリティサービスの構築を目指す同社が描くMaaS(Mobility-as-a-Service)で社会はどう変わっていくのか考察する。

MaaS構想を実現する「MONETプラットフォーム」

まず、MaaS構想を実現するのに不可欠な「MONETプラットフォーム」の概念を説明する。MONETプラットフォームは「サービサー(コンビニ、宅配、スーパー、医療など)と連携を図りながら、自動車メーカや運輸会社の持つMaaSデータとも接続するプラットフォームを指す。MONETはそのプラットフォームにおいて、データを上手に取り扱い、かつ、異業種をつなぐ『プラットフォーマー』として存在する。
すでに車体情報・走行情報・車内情報・搭載カメラ情報など、170以上の車両ログをデータとして集約し、それらを『MONETプラットフォーム』で共有している。さらに、サービスAPIを通じてトヨタ自動車、ソフトバンク、Yahoo!など、他のプラットフォームからも接続可能な状態を形成している。
『MONETプラットフォーム』では既存モビリティの交通事業者どうしの連携を図れ、その結果ユーザは複数の交通手段を柔軟に組み合わせながら移動の高度化・効率化を享受することができる。
同じプラットフォーム上ではサービサーも連携し、交通事業者とサービサー、あるいはサービサーどうしの共創によって新規需要に応じた新たなサービスを創出する。さらには駐車場の空き状況など、まちのインフラ情報を組み合わせれば、まち全体としての最適化も図れるという。

「自動運転」は後付けでもMaaSを推進していく

2019年1月に合弁会社化して事業をスタートさせたMONETは、オンデマンドモビリティサービスと、そこから得られたデータ解析、自動運転車とMaaSを融合させたAutono-MaaSを主な事業として展開する。
MONETの描く将来像は、運転手のいない完全自動運転車で、数々の車載センサーから得られた膨大なデータをAIでリアルタイム分析しながらスマートな移動ができる社会だが、会社設立から矢継ぎ早に自治体と実施している実証実験では、まだアナログ的な段階だ。
もちろん、スマートフォンのアプリを使って配車予約をするなどのテクノロジーは活用するが、基本的には乗り継ぎをシームレスに連携させるマルチモーダルサービスのトライアルである。
ただ、これまでの実証実験と異なるのは、MONETではさまざまなデータを取得してAIで分析している点だ。担当者も自動運転は後から当てはめればいい、と語る。乗降者や車両から得られたデータを収集して分析、課題を創出しながら、サービスをアップデートさせていることが重要なポイントなのだという。
これまではデータの蓄積がなかったため、実証実験で得られた知見は事業者が変わったりすると将来につなげることが困難だった。MONETでは収集したデータを別の実証実験の応用に生かすことができる。モビリティサービスが常にアップデートされていくのだ。
確かに、完全な無人自動運転を待っていては、物事は何も前に進まない。自動運転を待たず、先行して実証実験を進めてサービスを向上させることができる仕組みだ。といっても自動運転の実装は何年も先のことではない。MONETでは、蓄積されたデータを自動運転に実装していくのは20年半ばを想定している。

業界の垣根を超えた連携

MONETの株主構成は日野自動車や本田技研工業、いすゞ自動車、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、マツダなど自動車業界の垣根を越えている。また、MONETコンソーシアムに加盟する企業数も20年2月に500社を超えている。自治体との実証実験や包括連携協定なども加速している状況だ。

移動の社会課題

こうした期待の高さの背景には、日本の社会が抱える課題の解決が待ったなしの状況だからだといえる。
少子高齢化は言うまでもなく、65歳以上の買い物困難者は820万人、免許返納者数は過去10年間で12倍に急増、地方で足となるバス会社の83%が赤字、学校の統廃合は過去10年間で5000校、医者のいない637地区など、先送りできない課題が山積している。これらを解決するには、新しい施設やインフラを整備するといった従来型の「ハコもの」への公共事業投資の発想では、時間があまりにも足りないし、そもそも財源の確保ができない。そこで、テクノロジーで補っていく手法の一つとしてMaaSが各自治体から注目されているのだ。

 

「不動産」から「可動産」へ

MaaSの導入で社会課題を解決していく中で、社会の在り方や考え方が根本から変わってくる。これまでは病院を建てたり、コンビニを出店するなど「不動産」の考え方が常識だったが、これからはサービスのほうから困っている人にアプローチしてくる「可動産」の時代になっていく。例えば、店舗型のコンビニではなく、買い物困難者宅まで自動運転で移動してくるコンビニの登場や、医療でいえば過疎地に病院を建てたり、医者を派遣するのではなく、看護師を乗せた診察車が移動してモニターを見ながら病院にいる医師が遠隔で診察する。
しかしこれらの変革については、法律という課題に直面する。いままでのビジネスは基本的には不動産を前提とした商売だったが、クルマにサービスを載せて市場に提供していこうとするとルールや法律がない状況だ。
だがこれも時間の問題で解決されてくるはずだ。「可動産」のような、これまでとはまったく発想の異なるサービスやビジネスの地域ニーズは高い。
例えば長野県伊那市との「医療×MaaS」の実証実験は、伊那市側からニーズが上がってきたという。免許返納者が増えて通院困難者が増えると、医師が訪問して診察しなければならない。すると今度は、逆に病院に通う患者に対応できなくなるといった悪循環が起きていたという。
19年12月~20年3月31日まで実施中の実証実験で使われている運行車両「ヘルスケアモビリティ」はフィリップス・ジャパンとの連携によるものだ。看護師を乗せたヘルスケアモビリティが慢性期疾患の患者宅に出向いて、車両内のビデオ通話で医師と遠隔でコミュニケーションをとりながら看護師が問診や診察をする。スケジュールの予約や配車、患者情報のクリニック内やクリニック同士のクラウドでの共有システムの構築はMONETが受け持つ。
こうした課題は伊那市に限らず、全国各地で多発してくるだろう。
MaaSは、配車アプリでサービスの予約や決済ができるといった単なる便利な移動手段ではなく、社会、とりわけ地方の課題を解決するための手段として期待されている。そして、同時進行で「可動産」のような、これまでとはまったく発想の異なるサービスやビジネスが、次々と創出されていくだろう。
企業・自治体が持つさまざまなデータやモビリティに関する情報を連携させ、近い将来MONETから新しい時代がうまれることを期待したい。

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